暮らしや働き方などライフデザインを考えるとき、一つのきっかけになるのが「旅」です。
いつもと違う風景や暮らしを体感することで、ライフスタイルの選択肢が幅広いことを実感し、視界が開けていく体験をすることができます。
そこで、今回は、旅をすることで、暮らしや仕事、地域とのかかわり方について大きなヒントを得たというミライカレッジ講師・加形拓也さんの体験談をご紹介します。
「育休」を有効活用し、家族との時間を作り、仕事の参考になる旅を計画
(茨城県小美玉市でのミライカレッジ 中央が加形さん)
その加形さんが、約2カ月をかけて家族4人で世界一周をする!という思いきった旅に出たのは、奥様の仕事がきっかけでした。料理研究家をしている奥様の本の企画で、世界各地での取材が必要になり、その間、まだ小さい子供たちの子育てをどうしよか、という問題が持ち上がったのです。
日本で仕事をしながらお留守番、ということも選択肢にありましたが、1人目のときにはとれなかった「育休」を2人目のお子さんの誕生をきっかけにとってみたいと考えていたこともあり、この機会を活用し、家族全員で取材旅行に行くことに。加形さんの仕事内容や研究にも役立つように、世界の食取材に加え、ライフスタイルや新しいサービス、まちづくりの様子を見て回る旅を計画しました。
行き先は、アメリカ、イギリス、フランス、スペイン、ポルトガル、ドイツの6カ国15都市。日程はあらかじめ決めず、小さなお子さんの体調を見ながらマイペースの旅を進めました。
都市で働く料理人が郊外へ移住。料理の技術と自然環境が融合した、新しい“おいしさ”を提供
加形さんは、各国で世界の最先端をいく食の現場を訪問。その中には、豊かな自然環境を持つ地域に開業することで人気を得ているお店が多くありました。
たとえばこちらはロンドンからクルマで5時間の荒野を開拓してできたRIVER COTTAGE。ロンドンから移り住んだ料理人が自家栽培をする畑や牧場をつくり、レストランを併設しています。その日に最もおいしそうに実った素材を主役に、一流の技術で仕上げたメニューを提供。お客さまも地域の風土から生まれた料理を楽しみ、遠くから訪れるほどの価値を見出しています。
人や情報が集まる都市部ではなくても、新しい価値観を提案するレストランを作りだし、それがお客さまに支持されることを目の当たりにした加形さん。ライフデザインを考えるとき、仕事や暮らしの拠点とする場所は、これまでよりもっと自由に考え、選択肢を広げても成り立つ時代ではないか、と感じたそうです。
小さな町だからこそ、個性を生み出し発展できる ― 「地の利」を活かして美食の街として発展したサン・セバスチャン
その考えに確信を持ったのが、美食の町として知られるスペインのサン・セバスチャンでの食べ歩きです。
(サン・セバスチャンの旧市街)
(毎夜にぎわうバル)
(各店がアイデアを競い合うピンチョス)
際立った観光資源も持たない小さな町が、なぜ人口当たりのミシュランの星の数が世界一になるほど発展し、世界から注目を浴びているのか。そんな疑問を持って滞在する中で、加形さんが気づいたのは「地の利」を活かすということ。ここでは、優れた食材を供給する農業・漁業・酪農が安定的に行われ、その恵みを最大限に活かそうとする料理人が集まり、さらに料理人同士が技術を教え合うなどオープンなコミュニティを形成。小規模な街だからこそ、食に必要な要素が集積し、互いに刺激をし合うことで創造的な美食が生み出されているのだそうです。
町の規模にかかわらず、その土地の「地の利」を活かせば魅力を発信できる。地域の食材が独創的な料理として昇華した、色とりどりのピンチョスをつまみながら、まちづくりのヒントを得ることができました。
後編では、加形さんが旅することで得たライフデザインの考え方や、旅を終えた後の生活の変化をお伝えします。
後編はこちらになります。
ライフデザインを考えるヒントは「旅」の中にあった!加形拓也さんが体験した、世界一周の旅をご紹介(後編)